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    <title>くつした</title>
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    <updated>2009-10-01T05:16:19Z</updated>
    <subtitle>テキストのほう</subtitle>
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    <title>だいたい解決する探偵</title>
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    <published>2009-10-01T03:47:28Z</published>
    <updated>2009-10-01T05:16:19Z</updated>

    <summary>第一幕 第二幕 第三幕 第四幕 終幕...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
        <category term="小説" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p><a href="http://wog.jpn.org/k/t-1.html">第一幕</a></p>
<p><a href="http://wog.jpn.org/k/t-2.html">第二幕</a></p>
<p><a href="http://wog.jpn.org/k/t-3.html">第三幕</a></p>
<p><a href="http://wog.jpn.org/k/t-4.html">第四幕</a></p>
<p><a href="http://wog.jpn.org/k/t-5.html">終幕</a></p>]]>
        
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    <title>花火</title>
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    <published>2009-07-23T11:34:52Z</published>
    <updated>2009-07-23T11:55:46Z</updated>

    <summary>中学の頃だったか、友達と公園で花火をしようとしたことがある。夜の8時頃に各々花火...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
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        <![CDATA[<p>中学の頃だったか、友達と公園で花火をしようとしたことがある。夜の8時頃に各々花火を持って公園に集まり、さあ遊ぼうといったところでどこからともなく金髪の兄ちゃんが自転車に乗ってこっちに向かってきた。</p>

<p>兄ちゃんは「君たち、この公園の近くには老人ホームがあるだろう。ここで騒ぐとおじいちゃんおばあちゃんに迷惑がかかってしまうんだ。それと、うちには赤ん坊がいるんだけど、君たちの騒ぎ声でその子が泣いてしまうので、できるならこの公園では花火をしないでおくれ」という内容のことを、僕らに分かりやすいようにヤンキー語に変換して教えてくれた。</p>

<p>それでも花火を楽しみにしていた僕らは、退散することなく不満そうな面持ちで立っていた。すると兄ちゃんは「なんですか。やろうっていうんですか。そうとなれば僕も容赦しませんよ」と、またヤンキー語で言った。兄ちゃんの言うことにも一理あるので、僕らはそそくさとその場を後にした。</p>

<p>あれから3年経った今、近所の公園からパンパンというロケット花火の音が聞こえてくる。さっきコロの散歩に行くときに小学生の集団を見かけたから、やっているのは恐らくあいつらだろう。3年前であれば「うるせえなあ」と眉をひそめたのだが、今では「お前ら早く逃げないと、来るぞ！」と、つい彼らの身の心配をしてしまう。<br />
</p>]]>
        
    </content>
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    <title>共有</title>
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    <published>2009-07-20T01:12:04Z</published>
    <updated>2009-07-20T01:13:58Z</updated>

    <summary>口内炎が痛い。これまで僕が作ってきた口内炎は、どれも口の中を誤って噛んでしまって...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>口内炎が痛い。これまで僕が作ってきた口内炎は、どれも口の中を誤って噛んでしまって、その傷口が悪化する種類のものだったのでよかったが、今回の口内炎は自然発生したものだ。ということは、僕の栄養管理に問題があるということなのだろう。まきびしを頬張っているかのような痛みにここ1週間さいなまされていて、食事をとるのだって一苦労だ。</p>

<p>例えば体中の神経を1本1本引きちぎられたとしても、その痛みは１ミリも他の人に伝わることはない。言うまでもなく、それは他人だからだ。いくら腹を下してひどい腹痛に見舞われていても、居合わせた友達からは「そっか、大変だね」という同情の言葉を得ることしかできない。「そっか、じゃあ治してあげよう」といっておもむろに開腹手術をし始めるような友達はいないし、いても困る。</p>

<p>ただ、自分が苦しむ分にはいい。困るのは、他人が苦しんでいる場合だ。どんなに相手の苦しみを汲もうとしたところで、それは想像に過ぎない。苦しみは全く同じ経験をした者同士でしか分かち合うことはできないのだ。</p>

<p>そして、もっとも危惧すべき実際の問題として、出産が挙げられる。愛に溢れた家庭を築こうと約束し、以来平和に暮らし着てきた新婚夫婦に初めて訪れた出産という大舞台。痛みに苦しむ妻。応援する夫。「痛いだろうけど、頑張れ！」病院中に響き渡るような大声で夫が励ます。が、当然夫は少しも痛まない。妻は「他人事だからって」と口角泡を飛ばす。「あなた子供産んだことあるの」と叫ぶ妻。―と、このやり取りも想像に過ぎないが、それほど出産の痛みは辛いと聞くから、こういった感情は湧き起こってもおかしくないはずだ。</p>

<p>痛みが妻か夫、出産の場合は妻だが、どちらかにしか発生しないからこういった「他人事のくせに問題」が起こる。では、そういう時にどうすれば妻と痛みを共有できるのか。そこで口内炎である。</p>

<p>病院にはたくさんの薬とかたくさんの医者がいるから、口内炎を意図的に作るなんて楽勝だろう。で、ストレッチャーを追いかける夫の口に一箇所だけ口内炎を作り、続けてその患部に直接口ピアスを開けるのだ。想像しただけでも痛い。さすがに病院だから殺菌消毒はしてもらえるだろうが、痛いのは間違いない。ストレッチャーの隣で喚き散らす夫。何事かと心配する妻。</p>

<p>「どうだ、俺だって痛いんだ。だから頑張れ」<br />
「そうね、あたし頑張る」</p>

<p>完璧だ。これで出産を境に互いがギクシャク、なんてこともなくなる。生まれてきた子供も仲睦まじい夫婦を見て育つことになる。ありがとう口内炎。頼りになるぜ口内炎。</p>

<p>僕も男で結婚願望がある以上、少なからず出産の立会いを経験する可能性はある。その時に口内炎をこしらえているかどうかは分からないが、僕に限ってはピアスを開ける必要はない。口内炎だけで十分に喚き散らせるからだ。<br />
</p>]]>
        
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    <title>ジャングルジムから見えるもの</title>
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    <published>2009-06-25T00:46:16Z</published>
    <updated>2009-10-01T05:18:32Z</updated>

    <summary>急に部屋の明かりが消えたので、最初、私は妻のいたずらだと思った。結婚してからとい...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
        <category term="小説" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>急に部屋の明かりが消えたので、最初、私は妻のいたずらだと思った。結婚してからというもの、私は彼女の相手をせずに本ばかり読んでいるため、時おり彼女はそっと私の部屋に入り込み、部屋の照明を消して私の読書の邪魔をしていたのだった。今回もそれだと思ったのだが、どうやら違うようで、いつもの勝ち誇ったような含み笑いが聞こえてこないことから察するに、恐らく停電だろう。窓の外からは気の早い蝉の鳴き声が聞こえる。</p>

<p>私は読んでいた本を閉じ、ソファから立ち上がった。暗い部屋の中を手探りで歩く。うっかりティッシュ箱を踏み潰してしまうが、なんとか部屋の入り口まで辿り着いた。照明を何度もパチパチとやってみるが、全然点く気配がない。1階では妻が騒いでいる。きっと1階も真っ暗になってしまったのだろう。私は諦めて再び部屋の中を歩き、またティッシュ箱を踏み、ソファに腰掛けた。</p>

<p>「停電かしら。テレビもパソコンもプツンと切れちゃったのよ」私の隣に腰掛けた妻が言う。テレビを点けっぱなしにしながらパソコンを使ったのか、その逆か、もしくは両方点けっぱなしで他のことをしていたのか。日頃私に節約を促すくせに、自分はどうなんだ。結婚当初はそうでもなかったが、結婚してちょうど5年目になる今では、些細なことが気になって仕方がない。</p>

<p>雑誌から仕入れたのであろうハーブに関する知識を自慢する妻を置いて、私は立ち上がって窓のほうへ向かった。私たちの家は高台にあるので、窓からは町を一望できるのだ。窓を開けて外を見てみると、どうやら他の家でも停電が起こっているようで、あちこちの家屋から「もー」というようなブーイングがあがっている。ひどいところでは子供が泣き出している家もあって、午後9時を過ぎたというのに町は少し騒然としている。窓から入るぬるい風を顔で受けながら、私はそんな光景を眺めていた。</p>

<p><br />
初めはカラスか何かだと思った。電線から電線へ飛び回るそれを最初に見つけたときは、私はカラスか何かだと思って気にもしなかった。が、その何かが電線を横切る度に電線から青白い火花が飛び散り、その近郊の家の明かりが消え、どよめく家庭が増えるを見た私は、次第にそれはカラスではない別の何かだと気付いた。よく見ると、その飛んでいる何かの形が次第に掴めてきた。</p>

<p>ザリガニだった。通常のよりも何倍も大きい、人間の背丈ほどあるザリガニが、私たちの町の電線という電線を、その両手のハサミで切っていたのだった。しかも、空を飛んでだ。</p>

<p>妻を呼ぶべきか迷ったが、結局は呼んだ。そしてそのおかしな光景を二人で並んで眺めながら、「ザリガニって飛んだっけ」ということを一緒に考えた。その時の私たちは既に冷静な判断力を失っていて、「例えばカマキリが飛ぶみたいに、ザリガニだって羽ぐらい持ってたんじゃないかしら」という妻の推論を、そうかもなと私は思い始めていた。そうでもなければザリガニが空を飛ぶ現象を証明できようはずもなく、ただ私達はひとつの窓からザリガニが町の上空を飛び回るのを見ていた。</p>

<p>何十年に一度の流星群だってしばらく見ていれば飽きるように(少なくとも私たちはそうだった)、次第に空飛ぶザリガニなんかまったく物珍しくなくなってきた。部屋は暗いままで、クーラーはもちろん動くはずもなく、部屋は蒸し風呂のように暑くなっていた。団扇を探そうにも部屋が暗くて見つからず、妻はさっきから愚痴を言ってばかりだ。仕方がないので、私は「公園にでも行かない？」と妻を誘ってみた。夜風に当たれば妻の愚痴も少しは減るだろうと思ったのだ。</p>

<p>妻はTシャツに短パン、私はTシャツにスウェットのパンツという格好で外に出てきた。ほぼ、寝巻きだ。公園へ向かう道を二人で並んで歩く。車は1分に1度通るか通らないか程度だ。風がやさしく妻の髪を撫でる。が、風が湿気を帯びているので、妻はそれすらうっとおしそうで、「汗かいちゃった」だの「夏ってこれだから嫌い」だの、やっぱり愚痴をこぼしている。街灯はほとんどが切れてしまっていて、運よく点いているのを発見しても、例のザリガニがすぐさま飛んできて、ブツンと電線を切ってしまう。一度だけ私達の10mほど上空をザリガニが飛んでいくのを見たが、空を飛んでいることや、並外れた大きさ以外は普通の造形で、マントも羽織っていなければ、3分経ったら帰る様子もない。5分ほど歩き、私たちは公園に到着した。</p>

<p>意外なことに、公園には町の住民が数多く来ていた。その公園にはあちこちにベンチがあって、「こんなにいるのか」と思わずにはいられないほど多く設置されていたが、それらがほとんど使われているのを見ると、恐らく10人強はこの公園に来ているに違いない。</p>

<p>私たち夫婦も同じように空いているベンチを見つけて腰かけ、一息つく。ついたところで再開した妻の愚痴を聞き流しながら、私は結婚した頃のことを思い出していた。あの頃は結婚生活の何もかもが新鮮で、妻の洗濯物を取り込む姿や、風呂を掃除する姿、いや妻だけでない、庭に咲いたタンポポや、水溜りに映った雲と空、そのすべてが真新しく見えた。それなのに今では、すべてがあって当たり前のように思えてしまっている。どこの夫婦もみなそうなのだろうか。恐らくそうなんだろうけど、でもこれってどうなんだろう。</p>

<p>私が深いため息をついたのと同時に、公園内にどよめきが走った。何だろうと思って声の方に顔を向けてみると、なんと例のザリガニが上空から私たちを見下ろしていたのだった。両手のハサミはまるで万歳をするかのように掲げているが、その姿勢で硬直したまま、公園の頭上5mほどの位置で静止していた。見たところザリガニに羽らしきものはなく、まるでUFOか何かのように空中に浮いている。</p>

<p>慌てて妻の方を振り返る。妻は顔で驚いてはいたが、「どうやって浮いてんのかしら」などと、案外冷静な意見を漏らした。それもそうだ。どうやって浮いているんだろう？他の町の住人たちも同じことを考えているらしく、みんな空を仰ぎながらあれこれ言っている。私たちの疑問をよそに、ザリガニはというとピタッと空中にとどまっているだけで、「地球を侵略しにきた」だの「願い事を叶えてやろう」だの言う素振りはまったく見せず、ただ、そこに浮かんでいた。</p>

<p>すると、「ねえ！」という声が聞こえた。男の子の声だ。声のする方を見ると、ジャングルジムのてっぺんに男の子が立っている。横にはその妹と思われる女の子が腰掛けていて、二人して空を見上げている。男の子は空を指差しながら、ジャングルジムのふもとにいる両親に呼びかけた。</p>

<p>「すげえ！星ってこんなに綺麗だったんだ！知らんかった！」</p>

<p>はっと思い、私は空を見上げた。公園の上空に広がる空には、今日何度も見上げたはずの空には、満天の星が広がっていた。黒のカーテンに刷毛で白いペンキをパパパッと飛ばしたような、そんな星空だ。名前の分かる星はほとんどないが、そのどれもが力強く、それでいて優しく輝いていて、こうも星って見ていて頼もしいものだったのかと、本でしか世界を知ろうとしなかった私ははっとさせられた。確かにそうだ、私は男の子の言うところの、「知らんかった」のだ。</p>

<p>隣の妻を見てみると、口をぽかんと開けたまま空を見続けている。少ししてから思い出したかのように私の方を向き、「見て、ほら、すごい！」と嬉しそうな声をあげている。ジャングルジムの男の子と大差ないはしゃぎようだ。私も自然と笑みが零れるが、胸にはいくつかの疑問が沸き起こっていた。今日だって何度も見上げたはずの空に、こんなに綺麗な星空に、どうして今まで気付かなかったんだろう？どうしてこれまで妻の愚痴ばかり聞こえていたんだろう？</p>

<p>するとそのとき、それまで空中に留まっていたザリガニが、急に方向を旋廻し、あっという間にどこかへ飛んでいってしまった。「ビューン」というような効果音もなく、なんの名残惜しさも匂わせず、あっという間に私たちの空から姿を消した。私が「ザリガニ星に帰ったのかな」と妻に言うと、妻は「どぶよ、どぶに決まってるでしょ」と言った。先ほどまでとはうってかわって、妻の顔はすごく晴れ晴れとしている。</p>

<p><br />
公園を後にする人が増えたので、私たちもそれに習って家に帰ることにした。電灯はひとつ残らず切れていて、チョロチョロと火花を出す電線は危なかったが、見ていて何か清清しいものを感じた。どこの家からも明かりが消えていて、そうだ、夜ってこういうものだったんじゃないのか、なんて気取ったことも私は考えた。</p>

<p>3回目の曲がり角を曲がった時、私はふと思った。これまでは民家の明かりのせいでこの星空が見られなかったのでは？ということをだ。あのザリガニは、私たちにこの星空を見せるためにああやって電線を切っていったのでは？それともただ、ハサミの切れ味を人間に見せ付けたかっただけなのだろうか？考え込む悩む私をよそに、私の手を握って鼻歌混じりで歩く妻の髪を、風がやさしく撫でた。</p>

<p>私にはその風が、とても懐かしく、そしてとても愛おしいもののように感じられた。<br />
</p>]]>
        
    </content>
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    <title>全員</title>
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    <published>2009-05-28T14:44:01Z</published>
    <updated>2009-05-28T14:56:30Z</updated>

    <summary>初めまして。本日ここにお集まりいただきました皆さんは、何らかの形で僕と接触するこ...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>初めまして。本日ここにお集まりいただきました皆さんは、何らかの形で僕と接触することになった、もしくはなるであろう方たちです。僕と仲良くしてくれた方、僕とケンカした方、一回しか話したことのない方などいろいろお呼びしましたが、お忙しい中ご参列頂いた事に対して、まず感謝の意を表したいと思います。</p>

<p>さて、最前列で僕の演説を嬉しそうに聞いてくださってるあなたは、僕が生涯一番長く話した相手です。僕の話は面白かったでしょうか。つまらなかったでしょうか。何にしろ、世界の誰より長く僕と向き合ってくれたあなたには、本当に感謝しています。もう飽きたのでなければ、どうぞこれからも話しましょう。</p>

<p>次に、会場の隅でうつむいてケータイをいじっているあなた。あなたは僕をこれまでにない怒らせ方をした方です。一体どうやったのか気になるところですが、まだ顔も名前も分からないので、深くは追及しないことにしましょう。あるいはもう出会っているのかもしれませんが。</p>

<p>遠くからこっそり僕の方を見ているあなたは、世界で一番僕のことを気に入ってくれた方です。あなたがいつ、どこで、どういう状況で僕のことを気に入ったかは分かりませんが、何にしろこれはありがたいことです。あなたが僕の奥さんであれば更にありがたいです。</p>

<p>さっきから舌打ちばかりしているあなたは、世界で一番僕のことを嫌った方です。それほどまでに嫌われるとなると、僕もきっとあなたを嫌っているんでしょう。性別は分かりませんが、なるべく関わらないようにしていきたいですね。頑張りましょう。</p>

<p>会場右手のカーテンの向こうには、誰かが隠れているような気がします。多分、何らかの関係で僕を死に追いやる方でしょう。いないと思えばいないようにも思えるのですが、それは今は分かりません。</p>

<p>多くの方がご存知のとおり、僕は大変面倒な性格に生まれてしまいました。というと言い訳のように聞こえるかもしれませんね。面倒な性格に育ってしまった、と言うべきでしょうか。それを知ってか知らずかあなたがたは僕と関係を持つことになってしまい、嫌な思いをした人も多いと思います。</p>

<p>ただ、僕と関わってしまうことは災害か何かだと割り切って、ここはひとつ、なるべく仲良くしてあげるように努めてください。生意気なことを言うかもしれませんが、さらりと聞き流してあげてください。僕に殴りかかられるようなことは、ないとは思いますが、その時はボコボコにしてあげてください。何をされるか分かりませんが、柔軟な対応をお願いしたいと思います。</p>

<p>ええと、ここにおいで下さった方のうちの、せめて2割でも僕のことを気に入ってくれていたらなあと、そんなことを考えながら今日このステージに上がりました。アンケートで数字をはじき出すのもいいのですが、結果によっては本気で落ち込んでしまうので、やめておきましょう。</p>

<p>僕からは以上です。雨が降っております。お帰りの際は足元にお気をつけ下さい。それでは。<br />
</p>]]>
        
    </content>
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    <title>集合</title>
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    <published>2009-03-07T12:22:24Z</published>
    <updated>2009-03-07T12:52:57Z</updated>

    <summary>「ネットの友達を全員集めて一クラス作ったら面白いだろうなー」って最近よく思う。 ...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>「ネットの友達を全員集めて一クラス作ったら面白いだろうなー」って最近よく思う。</p>

<p>ネットには才能の塊みたいな奴らがごろごろしてるから、それでいて同い年だったりするから、なんか、楽しいんじゃないかなって。文章うまいやつに絵がうまいやつ。面白いやつ。みんなを集めたらとんでもないクラスができそうだ。日本で一番絵の上手い18歳に出てこられたら僕の居場所がなくなっちゃうけど。</p>]]>
        
    </content>
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    <title>筆箱</title>
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    <published>2009-03-03T01:35:30Z</published>
    <updated>2009-10-01T05:19:16Z</updated>

    <summary>インターネットが小学生に普及している。 僕が小学校6年生の時ですらパソコンの授業...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
        <category term="小説" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>インターネットが小学生に普及している。</p>

<p>僕が小学校6年生の時ですらパソコンの授業があったのだから、あれから何年も経った今の小学生たちがパソコンを使うことに何ら違和感は感じないが、ただ、あまりに小さい頃からパソコンの使い方を覚える事に対しては、どうしても不安が拭いきれない。</p>

<p>既に新聞などで報道されているように、サイトでのいじめだとか、変なサイトに行っちゃって架空請求に遭ったりするとか、そういったネット関係の被害に小学生が遭っていることもそうだが、それより僕が危惧しているのは、パソコンという便利な機械は様々なものの代用品になり得る可能性を持っていて、その必要以上の便利さによって、これまでにあった何かが小学生から失われてしまうのではないか、という事だ。</p>

<p>=======</p>

<p>春にしては少し暑い日だった。</p>

<p>―「行ってきます！」</p>

<p>小学生らしい元気な挨拶が真新しい家の玄関に響きわたる。背中には黒のランドセル。転校初日ということで名札はないが、そのうち新しいのを貰えるはずだ。先日母親がジャスコで買ってくれた新しいシャツとズボンは、新品というだけあって汚れひとつない。</p>

<p>僕は先日、この町に引っ越してきた。新しい家はピカピカで、これまで住んでいた家とは大違いだ。前の家のときは泥だらけの足でも平気で廊下を歩いていたけど、これからはそうはいきそうもないな。そんな事を考えながら、昨日母親と一緒に歩いた通学路を一人で歩く。友達はできるだろうか。いじめられないだろうか。大好きなドッヂボールはやれるだろうか。昨日の夜にランドセルに詰めた期待や不安が、隙間から少し溢れ出る。</p>

<p>児童が登校する時間帯より少し早く登校していたので、学校には人気が少なかった。校門をくぐって職員室に向おうとするが、道が分からなかったので、途中で先生らしき大人を捕まえて道を聞いた。</p>

<p>職員室に入ると、僕の編入するクラスの担任だという先生が自己紹介をした。が、今ではもう名字すら覚えていない。何かの木の名前だったと思うが、もはやそれすらも確信が持てない。</p>

<p>チャイムが鳴ると同時に、僕と先生は教室へ向かった。4年2組。ここが僕のクラスになるらしい。ドアの隙間からはざわめき声が聞こえる。僕もあの声の仲間に入れるだろうか。先生がドアを開けて中に入ったので、少し遅れて中に入る。僕が入った途端にざわめきが一層強まる。</p>

<p>「静かに。今日は転校生を紹介します」</p>

<p>先生はそう言って僕の名前を大きな声ではっきりと言い、僕に自己紹介するようにいった。が、僕はほとんど聞いていなかった。児童の机の上にそれぞれ置かれているものに目を奪われていた。</p>

<p>パソコンだった。みんなの机に一つずつと教卓の上に一つ、白いノートパソコンが置かれていた。はっと振り返ってみると、黒板かと思った黒い壁は、黒板の色を表示しているだけの大きな画面であった。なんなんだろうこのクラスは、機械だらけだ。まさかと思って先生の顔を見ると、さすがに先生は人間だった。</p>

<p>先生の「ほら、自己紹介」の声ではっと我に返り、自分の名前と出身地、それとドッヂボールが好きであることを告げ、先生に促されて席の横まで行く。ランドセルを机の横にかけてから座る。</p>

<p>座った椅子も目の前の机も木製で、ほとんど前の学校と変わりなかった。様子が違うのは目の前のノートパソコンだけだった。それはパソコンについて何も知らない僕が見ても最新型だと分かるほど真新しく、デザインもかっこよかった。これを自由に使っていいのだろうか。心が弾むのが手に取るように分かった。</p>

<p>「ねえ、おまえってどこから来たんだっけ？」隣の男子にそう話しかけられて、顔を見る。短髪で眉毛は太く、背は僕より少し高い。彼は小学生らしいあどけなさを隠そうともせず、僕に話しかける。「あれだろ？ディズニーランドのあるとこだろ？確か」僕の前住んでいた県のことを言っているんだろう。「そうだよ」と言い、県名を口にする。</p>

<p>それから少し話しをする。彼の名前はシンタというそうで、言動を見ただけでもクラスで随一のお調子者であろうことが分かる。僕はどちらかと言えば大人しい性格で、前の小学校でも大人しい子とばかり遊んでいたため、こういうテンションの高い子には少し不慣れだ。</p>

<p>チャイムが鳴った。一時間目が始まるようだ。ランドセルの中から筆箱を取り出す。するとそこで隣のシンタが「おまえ、そんなの持ってきてんの？」と言った。僕の筆箱のデザインのことを言っているのだろうか。「え、ポケモンってダメかな･･･」と僕が言うと、「そうじゃねえよ、筆記用具なんて授業じゃいらねえよ」と返ってきた。驚いてシンタの顔をまじまじと見る。嘘を言っている様子はない。半信半疑で筆箱をランドセルに戻す。</p>

<p>彼が言うには、どうやらこの学校の授業では全てパソコンを使って行うらしく、だから鉛筆も消しゴムもいらないのだという。僕はパソコンなんかそれほど触ったことがなかったから、不安になってしまった。従兄弟の大学生がパソコンに詳しく、正月に家に遊びに行ったついでにマウスの使い方やタイピングの仕方なんかを教えてもらったが、それぐらいで、決して詳しいわけじゃない。</p>

<p>学級委員の号令に合わせて挨拶をする。座ると同時に全員がパソコンの電源を入れる。となりのシンタがやるのを見て、僕も同じようにスイッチを押す。教室中で軽快なメロディが鳴り響く。うるさいから音量を消せばいいのに、目立ちたがりの男子が必要以上に音量を上げているのだろう。隣のシンタもその一員で、わざとらしく「しまった！上げすぎた！」なんて言っている。</p>

<p>一時間目は算数だった。そもそも鉛筆もノートもなしでどうやって勉強するのだろう？と思っていると、先生が「じゃあいつも通りエクセルを開いてください」と言った。エクセル？訳も分からず戸惑っていると、シンタが「これだよ、この緑の四角いやつ」と言って教えてくれた。アイコンをクリックしてソフトを起動する。</p>

<p>すると、マス目の細かい表が画面に現れた。これで何をするのだろうと思ったら、先生がプリントを児童全員に配った。回ってきたプリントには信じられない桁数の計算が書いてあった。「19476302+29318401=?」なんていうのが何十個も書いてある。こんなのできる訳ないと思ったが、これはどうやらこのエクセルというソフトを使って解くらしく、左のシンタを見ると、彼は既にキーボードで数字を入力し始めている。慌てて僕も見様見真似でやってみることに。シンタから計算の仕方を教わり、なんとか足し算をこなし、引き算や割り算をやっているうちに1時間目が終わった。数字を入力するだけで、頭で計算しなくてもいいのは楽だけど、でも、これって本当に算数なんだろうか？放課に入ったところでその疑問をシンタにぶつけてみたところ、「大人になったら計算なんてパソコンばっかりみたいだし、いいんじゃねえの？」と返ってきた。そういうものなんだろうか。考えているうちに二時間目が始まった。</p>

<p>二時間目は国語だった。シンタが言うには、今はブログの書き方について学んでいるのだそうだ。「よりコメントが多く貰える書き方」や「ランキングをクリックさせる効果的な促し文」を先生が言い、それを実際に使ってブログを書くというものだった。児童全員には予め個々のブログが用意されていて、僕のブログは新しく先生が作ってくれた。僕は小さい頃から毎晩日記を書き続けていたから、日記なら慣れたものだ。それで好きな食べ物や思ったことなんかを好き勝手書いていたら、先生に怒られた。「それじゃコメントを貰えないよ」と先生は言った。</p>

<p>三時間目は音楽だった。歌うのは苦手だけど、もしかしたらこの学校の授業なら歌わなくてもいいかもしれない。そう推測していると、果たしてそうなった。先生に言われたとおりにデスクトップから音楽制作ソフトを開き、表示された五線譜に好きな音符をクリックで入力していく。すごく楽しい。「チャルメラ」や「ドレミの歌」のメロディを作っていたら、チャイムが鳴って授業が終わった。次の音楽の時間は、このチャイムを作ってみよう。そんなことを考える。</p>

<p>四時間目は図工だった。図工室に移動するのかなと思ったら、そうではなく、教室で行うらしい。今度は何のソフトを使うんだろうと思ったら、フォトショップだった。先生が指定したフォルダから一枚の写真を開く。学校の教室から撮ったと思われる、空の写真だった。青色がくすんでいて、あまり上手な写真とは思えない。これをどうするんだろうと思っていたら、先生が「今日は色調補正の機能を使って、空の青色を調節してみましょう」と言った。何がなんだか分からないでいると、隣のシンタが「おい、見ろよ」と話しかけてきた。何だろうと思って彼のパソコンの画面を見ると、写真の空をガンダムが飛行していた。他の画像と合成したのだろう。「うまいだろ」と彼は言い、ちょうどやってきた先生に見つかって怒られている。僕は先生の指示したとおりに作業してみたが、空だけじゃなく運動場の色まで調節されてしまったりして、なかなかうまくいかなかった。そんな感じで四時間目が終わる。</p>

<p>午前の授業が終わってお昼になったので、給食の時間だ。この学校では給食もちょっと変わっているのだろうかと思ったら、給食だけは普通だった。近い机をくっつけて教室を会議室みたいにして、白衣を着た数名の給食当番が食器に給食をとりわけ、学級委員の「いただきます」の挨拶で全員が食べ始める。そこまでは前の学校と一緒だったけど、そこからが違った。会話がないのだ。いつも騒がしいシンタでさえ一切喋らず、モグモグと口を動かしながら画面を見つつ、時おりキーボードに何かを打ち込んでいる。</p>

<p>机を移動した結果向かい合う形になった彼に、小さな声で「ねえ、みんな喋らないの？」と訊いてみる。すると彼は「喋ってんじゃねえかよ」と言った。またもや訳が分からずに頭の上に？マークを浮かべていると、彼は自分のパソコンの画面を僕の方に向けた。そこには会話文と思われる文がひっきりなしに並べられていて、随時新しい発言が上のほうに表示され、古いほうから下へ繰り下がっていく。確か、チャットというやつだ。これでクラスメイトと会話しているらしい。</p>

<p>「なんでこれで話すの？」と僕が聞くと、シンタは「食べながらじゃ話しづれえだろ、こっちの方がいいんだよ」と言った。マジか、と僕は思った。シンタに教えてもらってチャットの使い方を覚え、他のクラスメイトと話しをする。転校生ということもあって色々な男子や女子が話しかけてきてくれたが、顔は分からず終いだった。画面には名前しか表示されていないからだ。</p>

<p>そんな感じで給食を食べ終わり、昼放課に入った。その途端クラスの男子の一人が「ドッヂやろうぜ！」と大きな声で叫んだ。「サッカーがいいよ」と反対する男子もいたが、多数決で結局はドッヂをやることになった。やった！小さくガッツポーズをする。転校初日だし、ここは試合で活躍してみんなにいいところを見せてやりたい。</p>

<p>ところが、みんなはいつまで経ってもグラウンドへ行こうとしない。自分の席でノートパソコンと向かい合ったままだ。そのまま「やった！」だの「くそー」だの言っている。シンタは「そんなん当たる訳ねえし！」なんて強気なことを言っている。</p>

<p>もう大体想像はついている。シンタのパソコンの画面を後ろから覗いてみると、画面の中を小さなキャラクターたちが所狭しと動き回っていて、ボールのようなアイコンも中を飛び交っている。やっぱりか･･･。肩を落とす僕の前でシンタは両手で休むことなくキーボードを叩き続け、それに合わせて彼の操作するキャラクターがコートの内野を駆け回っている。そしてボールをキャッチしては素早く相手の内野を当てて数を減らしていき、あっという間に相手チームを全滅させてしまった。</p>

<p>「楽勝！」と彼は声をあげ、同時に「くそー」と教室のあちこちで残念そうな声がする。恐らく負けたチームの人たちだろう。シンタはくるりと後ろを振り返って「オンライン対戦もできるんだぜ」と言った。僕は「すごいね」笑顔を作って言い、自分の席に座り、ため息をつく。仕方がないのでクラスメイトのブログを読んで放課が終わるのを待つ。</p>

<p>しばらくすると、教室の掃除ロッカーのあたりで怒声が聞こえてきた。何だろうと思ってそっちを見やると、おにぎりのような体型をした気性の荒そうな男子が、メガネをかけた気の弱そうな男子の襟を掴みあげていた。隣のシンタは「あーあ、またやってるよ」と呆れ顔だ。二人が言い合うのを止める人はおらず、みんな自分のパソコンと向かい合ったままだ。見向きもしない。</p>

<p>隣のシンタが言うには、おにぎり君のほうはタケちゃんというそうだ。「メガネの子のほうは？」と僕が訊くと「ん？あいつはメガネだ」と返された。そのまんまだ。ケンカしている人を見るのはイヤだから止めたいけど、間に割って入る勇気が出せずにいる。</p>

<p>「お前しかいないんだよ！」とタケちゃんが叫ぶ。<br />
「そんなの、証拠がないじゃんか･･･」とメガネくんが反論する。<br />
「うるせえ！俺らのパソコンはネットに繋いでないんだから、やったのは同じクラスの奴しかいないんだよ！だったらお前以外に誰がいるんだよ！バカだのアホだの書きやがって！」そう言うやいなや、タケちゃんはメガネ君を掃除ロッカーに突き飛ばした。</p>

<p>ガン！と掃除ロッカーが音を立てて揺れる。慌てて僕はメガネ君のもとに駆け寄り、「ねえ、どうしたの？」と理由を聞く。メガネ君は「あ、転校生」と一言言った後で、仲間を見つけて安心したのだろうか、泣き出しそうな顔をして言った。</p>

<p>「タケちゃんが『俺のブログを荒らしたのはお前だろ』って言いがかりをつけてくるんだよ」<br />
荒らしというのが何かはよく分からないが、なんとなく性質の悪そうな行為だとは言葉の感じで分かった。</p>

<p>「言いがかりじゃねえよ、犯人はお前なんだから」タケちゃんが口を挟む。<br />
「じゃあ証拠を見せてよ！」とメガネくんが反論する。もう既に半泣きだ。</p>

<p>かわいそうになったので僕も「ええと、なんでこの子がそういうことしたと思うの？」とタケちゃんに向かって訊いてみると、タケちゃんは「転校生は黙ってろよ」と言った。そして少し考える顔を見せた後で、こう言った。</p>

<p>「もしかして転校生、おまえか？俺のブログ荒らしたの」</p>

<p>僕はブルブルと首を振り、自分の無実を証明しようとした。「そもそも荒らしっていうのが何なのかすら分からないんだ」と身の潔白を証明しようとしたところでチャイムが鳴り、タケちゃんはメガネ君に「次やったら殴るからな」と言い捨てて席に戻り、騒動はひとまず収まった。僕が自分の席に戻ると、隣からシンタが「あまり首突っ込まないほうがいいぜ、あんなのしょっちゅうだから」と言った。メガネくんはしくしくと泣いていた。</p>

<p>五時間目は道徳の授業だった。何を勉強するんだろうと思ったら、先生は「今日のテーマは『人の悪口はどうしていけないか』です。思ったことをどんどん率直に発言してください」と言った。どうやら道徳の授業では毎回、あるテーマに沿ってクラスメイトと1対1で議論を行うらしい。それも実際に口頭で行うのではなく、チャットでするそうだ。更に驚いたことに、発言はすべて匿名だという。これなら思ったことを発言しやすいし、論争が白熱しても相手が誰か分からないので、後でケンカになることはないというのが狙いだろう。僕の討論の相手は「悪口を言うと相手が落ち込むので、よくないと思います」という内容を繰り返し述べていた。多分、タケちゃんだ。外見はああやって気の強そうな感じを装っているが、実は心根の優しい人なのかもしれない。チャイムが鳴って五時間目が終わる。</p>

<p>パソコンのデスクトップに表示されている時間割によると、今日の授業は五時間で終わりのようだ。学級委員が号令を発し、「さようなら」と全員で言って解散する。まさか｢さようなら｣もパソコンでやるんじゃ？と思ったが、そうならなくて安心した。</p>

<p>担任の先生は教室から出る間際に「そうそう、朝顔に水をやるの忘れないでね」と言った。が、教室を見回しても朝顔なんかどこにも見当たらない。そしてやはり、みんなは帰り際に自分のパソコンで何か作業をし、それから電源を切って帰っている。シンタも同じ作業をしているようで、近寄って彼の画面を見てみると、パソコンの画面には朝顔のイラストが表示されていて、「水やるのサボると枯れるんだぜ、よくできてるよな」と言った。どうやら植物を育成するソフトが各パソコンに入っているみたいで、みんなはこれを育てているようだ。僕は自分の席に座り、自分のパソコンの右下に表示されていた花のアイコンをクリックしてソフトを起動したところ、いきなり大きな種が現れて植木鉢に飛び込んだ。そこからかよ、と思った。ジョウロのアイコンをドラッグで種の上まで持っていくと、水をやる描写が描かれた。水を浴びて嬉しそうに笑う種のイラストとは裏腹に、僕はというと半ば呆れ顔でそれを見ている。</p>

<p>パソコンの電源を切ったところで、僕の名前が呼ばれた。呼んだのはシンタだった。彼は「一緒に帰ろうぜ！」と言った。僕はすごく嬉しかったが、それを表情に出さないようにしてそっけなく「いいよ、帰ろう」と言った。</p>

<p>帰り道に色々なことを話した。好きな教科に好きなポケモン、あと前の学校のこと。シンタはすごい面白いやつで、何度もくだらないことを言って僕を笑わせた。僕の家の前まで来たところで、僕はシンタに訊いてみた。どうして僕らの学校は何をするにもパソコンを使うのか。シンタは少し考える素振りを見せてからこう言った。</p>

<p>「俺もな、ちょっとどうかとは思ってるんだけど、でも大人になったらパソコンばっかり使うじゃねえか。今の大人を見てもそうだろ。だから今のうちに慣れておけっていう大人側の配慮じゃねえの？いや、やりすぎだとは思うんだけどな」</p>

<p>シンタはそう言い、にやりと笑って「そうそう、俺、ドッヂ超強えんだぜ、ゲームもだけど、リアルのほうもな」と言い、ボールを投げる動作をした。そして僕の顔を見て、「お前自己紹介で言ってたけど、ドッヂ強いんだって？まあ、俺には適わないだろうけどな」</p>

<p>僕は「強いなんて言ってないよ、好きって言っただけだよ」とは言わず、「ちょっと待ってて！」と彼に言い放ち、きょとんとする彼を置いて自分の家に帰り、自分の部屋から古びたボールを持って彼の元に戻った。「今からやろうよ！」と僕が言うと、彼は「二人でどうやってドッヂやるんだよ！」と笑い、ポケットから携帯電話を取り出して耳に当てた。友達を呼び出してくれているのだろう。</p>

<p>「来いよ、転校生もいるぜ」公園に向かいながら電話に呼びかけるシンタの少し後ろを、ボールを抱えて僕がついていく。楽しそうに電話と話すシンタを見ながら、このドッヂが終わって家に帰ったら、お母さんに携帯電話をねだってみるのもいいかもしれないな、なんて考える。夜中に友達と電話したり、メールで好きな女の子を問い詰め合ったり･･･。ウキウキしてしまっていつの間にか駆け出していた僕を、「おい、待てよ！」とシンタが追いかけてきた。彼も彼で追い抜こうとしてくるため、負けないよう全力で走る。強めの日差しが道路を照らす。</p>

<p>春にしては少し暑い日だった。</p>

<p>=======</p>

<p>こういうことになってしまう。･･･よさそうだ。<br />
</p>]]>
        
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    <title>樹齢</title>
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    <published>2008-07-10T11:46:10Z</published>
    <updated>2008-07-10T11:53:59Z</updated>

    <summary>年の差なんて関係ない。 上下関係。それは職場や学校といった、人間と人間が共同で何...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
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        <![CDATA[<p>年の差なんて関係ない。</p>
<p>上下関係。それは職場や学校といった、人間と人間が共同で何かをする場所に置いてしばしば発生する関係である。上に立つ者と下に立つ者。人には各々の立場がある。職業上の立場。年齢上の立場。目には見えないがそれは確かに存在しており、その目に見えない何かによって人は振る舞いを強制される。そして本能とは遠く離れた、いわば理性による行動を強いられるのだ。</p>
<p>部活の休憩時間、僕はウォータークーラー(足元のペダルを踏むと水が出る機械、いわゆる「ピューッと出るウォター」である。)で水を飲んでいた。熱中症になってはたまらんと、それこそ砂漠でオアシスを見つけた飢えた行商人のように水を流し込んでいた。乾いた喉を通って流れゆく水は、まるで世界中の快楽を集めて運動会を開かせたかのような感覚で、とにかくおいしかった。僕は充分に満足し、武道場に戻ろうとした。</p>
<p>ボコンボコン。ふと横を見ると、体育館の前の通りで何人かの下級生がサッカーボールを体育館に乱暴にぶつけているのが目に入った。彼らはどこからどう見ても「おりこう」とは程遠い連中で、どちらかというと「おこりそう」な連中であった。そして現在とっている行動も、恐らくは「よくない事」に分類されるのだろう。壁には窓ガラスもついていたし、何より体育館前を通る人に迷惑だからだ。だからといって別に浦島太郎気分で体育館を助ける気にはならなかったが、一通りの道徳教育は小学校で学んできた僕だから、「うーん、邪魔だなあ」ぐらいには憤慨した。だけど見た目が怖かったから何も言わずそそくさとその場を後にした。</p>
<p>彼らと僕の決定的な違いがひとつある。それは年齢だ。彼ら（恐らく二年生だと思われる）と三年生である僕との間には、数ヶ月から一ヵ年程度の年齢差がある。その差は決して埋まることはなく、どれだけ頑張ったって歳が追い越されることはない。だが、逆に言うとそれしかないのだ。ただ僕は早く生まれてきただけに過ぎないし、彼らも遅く生まれてきたに過ぎない。生まれた順序が逆であったなら、人間はまったく同じものでも立場は全く逆のものになる。なんとも不思議な話である。</p>
<p>「この人は先輩だから遠慮しなくては」「こいつは後輩のくせに生意気だな」。このような、年齢差を意識しすぎるが故に起こるいざこざは、立場を気にする現代社会においては数数え切れないほどだと僕は思う。事実僕も「面倒だな」と思うような出来事は多々あったし、読者の方々にもきっと経験があるのではないか。ほんとにもう、年齢差って面倒だ！</p>
<p>だからもう、歳をみんな隠したらいい。グラビアアイドルだって平然とやってるんだから、僕らだってやってもいいはずだ。タバコも自由に吸えばいいし、お酒だって好きに飲んだらいい。エッチなビデオも好きに見たら、というか見れたらいい。見たい！！ともかく、年齢を気にしてはいけないという話である。</p>
<p>最後に、ここ最近で僕が最も感銘を受けた言葉を引用して、終わりたいと思う。</p>
<p><em>『木は年輪を気にして育ったりはしない。ただただ天に向かって葉を広げるのみである。』</em></p>
<p>これは西欧の哲学者「ウデタ・テヒャッカイ（1991~）」の著書に出てくる言葉であり、彼は巻末にてこうも語っている。</p>
<p><em>『百回なんて無理だよ～』</em></p>
<p>がんばれ！<br /></p>]]>
        
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    <title>School-Rule-Restraint</title>
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    <published>2008-06-25T03:17:31Z</published>
    <updated>2009-10-01T05:19:07Z</updated>

    <summary>その日は雨の降った翌日で、とても蒸し暑く、何もせずとも汗ばんだ。私は首からタオル...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
        <category term="小説" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>その日は雨の降った翌日で、とても蒸し暑く、何もせずとも汗ばんだ。私は首からタオルを提げていた。所々ほつれの目立つ、お世辞にも綺麗とは言い難いタオルである。それを偶然鉢合わせた生徒指導の教師に見つかり、「タオルを首から提げるな」という内容だけで小一時間説教を食ったのであった。</p>

<p>教師の傲岸不遜な態度には腹が立ったが、どうやら彼の生徒に対する指導というのはあくまで校則に基づいた内容によるものらしい。</p>

<p>校則―。生徒手帳に載っているあれである。話によると校則というものは基本的に校風に基づいて作られるらしい。「こういう学校にしたいので、こういうことは守ってくださいね」ということなのだろう。ならば、校風が変われば校則も変わるのではないか？我々が平穏無事な高校生活を過ごすためには、まずはそこから変革を起こさねばならないらしい。私は行動に移す事にした。</p>

<p>夜。私は教師が全員帰宅するのを見計らい、校内に忍び込んだ。校門をくぐって５０ｍほど歩いた先に、校風が刻まれた石碑がある。「努力」「知性」「情理」。石碑の中央部分には小さくその三つの言葉が彫られていた。私はまず家から持参したパテで文字の窪みを埋め、乾いた頃合を見て鑿（のみ）と槌で新しい言葉を彫っていった。</p>

<p>＝＝＝＝</p>

<p>「自由」と彫った次の日には、校則は撤廃され、何もかもが自由となっていた。生徒の髪型や服装に文句を言う者はいなくなった。私服登校は勿論の事、車で通学する者や、学校に住み込む者まで出てきた。授業はもはや授業として成立しなくなり、生徒同士の喧嘩は絶えない。そして教壇に立つ教師の姿は日に日に減っていった。割れたガラス。下卑た落書きだらけの黒板。いつしか学校は弱肉強食の無法地帯と化していた。</p>

<p>「愛」と彫った次の日には、生徒全員が誰かと交際するようになっていた。教師の中には生徒に手を出すものも少なからずいたが、それを非難する人間はおらず、誰もが望んだ通りの恋愛を堪能していた。毎日3回の保健の授業。挨拶代わりのキスが横行し、購買ではコンドームが売られていた。さらに校則上「恋人を愛する事」は絶対とされ、月に一万円以上のプレゼントをするだとか、週５のセックスだとかが強制されるようになった。一度付き合った恋人と別れる事は禁止されていたので、浮気は横行し、妊娠した女子も少なくなかった。結果、生徒間での親権争いまで起きた。</p>

<p>「金」と彫った次の日には、何をするにも金銭が絡んできた。授業中に教師に指名され、問題を解かせられるところまでは変わらないが、誰も頼らずに解くとその場で1000円貰えるようになっていた。逆に解き方が分からないと1000円取られた。今までのように「なんとなく」で人と友達になることはなくなった。友情は全て「契約」によって存在し、友達になりたい人間を見つけたら、そいつの性格の良さだとか喧嘩の強さなどといった、付き合う上でのメリットに見合った金額を相手に支払う。契約が成立すると、そいつとは無条件で友達となれる。そして契約期限が切れると赤の他人となるのだ。テストでは公然と賄賂が行われ、教科書を参照しながらテストを受ける生徒と、それを黙認する教師がいた。結果、金の多い人間が優等生となり、金のない人間は誰にも相手にされなくなっていった。</p>

<p>「笑」と彫った次の日には、誰もが笑っていた。朝礼は教師による漫談大会と化していた。授業では如何に人を笑わせるかについて教え、ボケとツッコミに分かれた実践授業なども行われた。教師は全て笑いの真髄を極めた人材ばかりが集まった。面白い人間は将来を約束され、振られても何も返せないような人間は退学となった。オーディエンスとしての実力も求められた。授業中少しでも笑いの表情を崩すと廊下に立たされた。笑い声が小さい人も立たされた。教師に負けじと面白い事を言おうとして失敗したやつも立たされた。いつしか心から笑っている人間は減り、幸せなのは自己満足を極めた教師だけという学校になっていた。</p>

<p>＝＝＝＝</p>

<p>様々な校則にすっかり疲れてしまった私は、校則を元の通りに彫りなおした。なんとなしに夜空を見上げると、肩にかけていたタオルがするりと落ちた。私はそれを自転車のカゴに入れ、暗闇にひっそりと佇む校風の彫られた石碑を見つめた。少し考えた後、私は、ライトを点けたために少し重くなったペダルを漕ぎながら帰った。<br />
</p>]]>
        
    </content>
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    <title>狭窄</title>
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    <id>tag:wog.jpn.org,2008:/k//1.202</id>

    <published>2008-05-28T14:32:59Z</published>
    <updated>2008-05-28T14:44:25Z</updated>

    <summary>トマトってうまい。 中学校の頃に受けた国語の授業で、「ニンジンは赤いというのが客...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>トマトってうまい。</p>

<p>中学校の頃に受けた国語の授業で、「ニンジンは赤いというのが客観で、おいしいというのが主観」と教師に教えられたのを覚えている。偏った主観でものを言うのは考え物だと思うし、ましてそれをブログに書くのは尚更だという事は分かっているが、トマトはうまい。</p>

<p>トマトの味が素晴らしいことは言うまでもないが、食感も他の果物の比ではない。ひとたびトマトに噛り付くと張り詰めていた果実の皮が裂け、溜まっていた汁が口の中一杯に広がる。プール開きのようなその開放感は、日々を鬱屈と過ごす僕にとってはこの上ない快感となるのだ。人間は大昔から木の実や果実などを食してきたという。トマトの果実らしい食感は栄養をとる事のみを考えた味気の無い食生活を送る現代人に、食べる事の本当の意味を教示してくれる。</p>

<p>そんな果実の中の果実ともいうべきトマト。しかしトマトを心の底から理解している人間は少なく、地球上の全人口から見るとほんの一握りでしかない。聞いた話では、西洋のイスパニアという国では住人同士でトマトをぶつけ合うという、常人の思考では理解しえない祭りが行われているという。トマトとはそんな扱いをしていい食べ物ではない。仏教における食肉のように、もっと重々しく扱うべきなのだ。</p>

<p>なぜなら、トマトとは人種、言語、宗教に関わりなく、全ての人間にとって掛け替えのない存在だからである。ケチャップの主な原材料がトマトであることは周知の事実であるが、ケチャップなくしてはオムライスはないに等しく、オムライスがない世界に価値などないのだ。つまり、この世界がその姿を成しえているのは、すべてトマトのおかげだという事である。パンドラが開けた箱からは様々な災いが飛び出し、最後に残ったのはトマトだったという。つまりはそういうことなのだろう。</p>]]>
        
    </content>
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    <title>所為</title>
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    <id>tag:wog.jpn.org,2008:/k//1.198</id>

    <published>2008-04-07T07:21:08Z</published>
    <updated>2008-04-07T07:22:08Z</updated>

    <summary>2週間あったはずの春休みは春風と共にさあっと過ぎ去ってしまい、通常であればその春...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>2週間あったはずの春休みは春風と共にさあっと過ぎ去ってしまい、通常であればその春風で吹き飛ばされるべきであった宿題はなぜか現在もずっしりと机の上に居座り続け、その存在感は新クラスにおける僕の非ではない。それで僕は焦っているかというとそうでもなく、今からやってもどうせ間に合わないと、息を吸って吐くだけで最終日を使い果たした。</p>

<p>どうして宿題をやり切れていないのだろう。バイトか？いや、僕より忙しい身の上で宿題をきっちり仕上げた人間は何人もいる。宿題の量か？これも違う。毎日空いた時間で少しずつやっていれば、余裕を持って提出できる量だ。とするとやはり、責任を問われるべきは僕のこの、世の中に甘えに甘えた、たるみきった性格に他ならないはずだ。</p>

<p>どうしてこんな性格になってしまったのだろう。この性格は親や教師からの教育によって培われたものだと仮定してみるが、そこまで甘やかされた覚えはないように思う。元高校教師で柔道二段、間違った事は大嫌いな虫好きの父親と、漫画「ハレのちグゥ」をエロ本と非難し少年の性のあり方について説教する母親に育てられてきたのだ。家庭内に教育の問題はなかったように思える。だとすると学校か？いや、幸い担任には小学校から高校まで恵まれてきたし、大人を信じられなくなるような教師に出会ってもいない。いい友人とも出会えたし、人格が捻じ曲がるほどの失恋もしていない。では一体、誰が僕を作り上げたのだろう？</p>

<p>自分に関わってきた全ての人間に疑いをかけてみたが、僕の性格をここまで捻じ曲げた真犯人は見つかる訳もなく、最初は何千人もの人間で埋まっていたこの取調室に残ったのは、責任逃れに必死で全身汗だくの僕だけであった。</p>]]>
        
    </content>
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    <title>保険</title>
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    <id>tag:wog.jpn.org,2008:/k//1.196</id>

    <published>2008-03-31T16:18:35Z</published>
    <updated>2008-03-31T14:19:49Z</updated>

    <summary>忙しい。 何で忙しいかって、バイトである。このブログは同じ学校の同級生のみならず...</summary>
    <author>
        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://wog.jpn.org/k/">
        <![CDATA[<p>忙しい。</p>

<p>何で忙しいかって、バイトである。このブログは同じ学校の同級生のみならず、教師にまで見られている可能性がなくもないということで、今までバイトの事については触れないようにしてきたが、他に書くことがないほどにバイトしかしていないので、もうバイトの事を書いてしまおうと思う。バイトが学校にバレたら停学という事らしいが、「それで休みが貰えるなら」といった状況に進行形で置かれている事を考えると、これも仕方ないと言えよう。</p>

<p>長い有給を使い果たした蟻たちが「･･･やるか･･･。」と働き出すこの春の時期、僕は春休みを利用して自転車屋でアルバイトをしている。時給はさして悪くない額であり、職場の雰囲気にも徐々に慣れてきたのだが、如何せん、忙しい。春というのは、桜が芽吹く季節でもあり、花粉症が飛散する季節でもあるが、何より自転車屋の自転車が一番多く売れる季節なのである。</p>

<p>この時期に来るお客様の大半が、初任給で何を買おうか悩む新社会人か、まだ見ぬクラスメイトに早速恋焦がれちゃってる新高校生だ。彼らはそれぞれの想いを胸に来店し、その多すぎるとも言える車種に戸惑い、不安を覚える。僕の仕事というのは、自転車の数だけ未来の可能性があるのだという事を彼らに教えてやる事。転びもせずに自転車の運転を覚えた人間なんて存在しない事。そして、運転は覚束ないにしろ、確かに希望に向かって前進し始めた彼らの乗る自転車を、そっと後ろから押し出してやる事なのだ。</p>

<p>というのは全て嘘である。バイトなんかしてないし、後押しなんか尚更である。やっぱり停学は怖いのである。</p>]]>
        
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    <title>土積</title>
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    <published>2008-03-11T13:35:43Z</published>
    <updated>2008-03-11T13:38:03Z</updated>

    <summary>今日は学校で球技大会という行事があり、クラス対抗で大規模なサッカーの大会を行った...</summary>
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        <name>大川</name>
        
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        <![CDATA[<p>今日は学校で球技大会という行事があり、クラス対抗で大規模なサッカーの大会を行った。結果は全敗だったが、こんなのはほんの余興に過ぎない。真の闘いとはこの後に行われる閉会式にこそあるのだ。だがそれに気付いているのはどうやら僕だけらしく、他の生徒はすっかり安堵しきった表情を浮かべている。閉会式が始まり、校長のスピーチに入った。試合開始だ。</p>

<p>地面に落ちている砂と土の混合体をうまく磨製してコイン状にし、それをどんどん積み重ねていく。校長のスピーチが終わるまでに一体いくつ積み上げられるか、というのが今回の試みだ。いかに薄く平なコインをすばやく生産できるか。そして焦る事無くそれを積み上げることができるかが勝負の分かれ目となる。</p>

<p>最初の数枚までは滞りなく作業は進んだ。前日に程よい感じに雨が降っていたので、まさに雨降って地固まるというやつで、良質な土が採り放題なのである。。数ある土塊の中から気に入ったものを数個選び、指で磨き、コイン状に精製していく。うん、湿り気も丁度いいし小石も少ない。校長の賛辞や表彰には一切耳を傾けず、ただ黙々と塔を積み上げていった。</p>

<p>ところが六枚目あたりに差し掛かったところで、バランスが不安定になってきた。塔の高さは優に５ｃｍは超えていようか。大きな土を乗せてしまうと倒れてしまうので、どうしても乗せる土は段々と小さい物になっていく。最上段の土は蟻ぐらいの大きさになってしまった。</p>

<p>「最後に生徒会に拍手しましょう！」の校長の声。拍手と共に試合終了。結果は9段であった。なかなかの出来だ。欲を出そうとせず、なるべく無心で淡々と作業したのが効を成したのだろう。300人の拍手に包まれながら僕は、「こんなんできてもサッカーで活躍しんとモテんで意味ないわ」と思った。<br />
</p>]]>
        
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    <title>湯温</title>
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    <published>2008-02-23T00:50:35Z</published>
    <updated>2008-02-23T00:53:30Z</updated>

    <summary>殺されるかもしれない。 何だかんだで高校も二年目をようやく終え、さあ受験だという...</summary>
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        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
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        <![CDATA[<p>殺されるかもしれない。</p>

<p>何だかんだで高校も二年目をようやく終え、さあ受験だというまだまだこれからな時期に、僕は自分の生命が脅かされていることに気付いた。</p>

<p>なんか、お風呂の温度がどんどん上がってきているのだ。冬に入って以来39度くらいに保たれていた我が家の湯温が、先月には40度を越え、先週には42度、今日見たら45度であった。</p>

<p>「ゆで蛙現象」という言葉がある。生きた蛙を茹でようと熱い湯に放り込んでも、あまりの熱さにたちまち飛び出してしまうが、まず蛙をぬるま湯で泳がせておいて、それを火にかけて段々と温度を上げていけば、蛙は温度の変化に気付くことなく茹で上がってしまう。慣れの怖さとかを実に分かりやすく例えた言葉だと思う。</p>

<p>これじゃないのか。これと全く同じ方法で僕を殺そうとしてるんじゃないのか。今日が45度だったんだから、来月には50度くらいにまでは上がっていそうである。60度なんていった日には茹で死んでしまいそうだ。特に進路は決まっていないが、この歳でまだ死にたくはない。</p>

<p>そこで「お湯が熱いよ」とお母さんに言ったら、全部解決した。そんな我が家の温暖化。</p>]]>
        
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    <title>十七</title>
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    <published>2008-02-14T12:34:00Z</published>
    <updated>2008-02-14T12:36:40Z</updated>

    <summary>つい先日、誕生日を迎えた。 まあ17歳になったからといって特に何かが変わったわけ...</summary>
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        <name>大川</name>
        
    </author>
    
    
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        <![CDATA[<p>つい先日、誕生日を迎えた。</p>

<p>まあ17歳になったからといって特に何かが変わったわけでもなくて、部屋の鏡は依然と猫背でだらしなくパソコンに向かう僕の姿を映し続けるだけで、小さな頃に見た「17歳」のイメージはその猫背坊主とは重なりもせずかすりもせず、そのままふわふわとどこかへ行ってしまった。これと同じようにこれからも僕は一定の年齢に達しても、自分が過去に描いたその年齢像には到底及ばない人間であるのだろう。</p>

<p>ところで先週は名古屋にも雪が降り、家の周りの田んぼや民家、すべてが真っ白に塗り替えられていた。確か去年も同じように雪は積もり、16歳の僕は全身全霊で雪を遊び倒した。そして去年以上に積もった雪を目の前にしても、全く心が躍っていない今の自分にさっき気がついた。</p>

<p>落ち着いて考えてみれば雪なんて冷たいし濡れるし滑るしでメリットなんて白いくらいしか見当たらないのだけれど、そんなことは考えもしない去年の僕は一心不乱に雪を掻き回し捏ね繰り回し、汗で雪を溶かすほどに遊んでいた記憶がある。</p>

<p>書いているうちにものすごく雪だるま作りたくなってきた。今年はもう無理だろうなあ。</p>]]>
        
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